近年建設業の写真管理ではアプリで管理しているところが多くなってきました。そんな写真管理アプリですが、さらに便利なのが電子小黒板というアプリ。 電子小黒板は、工事写真管理を効率化するためのスマートフォン・タブレット向けアプリケーションです。このアプリを使う事によって写真撮影の時に必要な黒板が必要なくなりました。それも国交省でも認められています。今日はそんな電子小黒板の素晴らしさを知ってもらいたいので解説していきたいと思います。
そもそも電子小黒板ってなに?
電子小黒板は、工事写真の際に使用する従来の黒板をデジタル化したものです。スマートフォンやタブレットなどのデバイス上で動作するアプリケーションとして提供され、工事現場のDXをサポートする重要なツールとなっています。主な特徴と利点は以下の通りです。
- 黒板作成の準備作業が簡単になり、物理的な黒板を持ち運ぶ必要がなくなります。
- 撮影時の手間が減少し、事前に登録したデータから必要な情報を選択するだけで済みます。
- 写真の整理が自動化され、撮影した写真は自動的にフォルダに仕分けられます。
- 国土交通省の営繕工事では、現場撮影の省力化や効率化を目的として、平成29年4月から原則として電子小黒板の活用が始まっています。
- 工事名、撮影日、工種、施工状況、立会者の氏名などの情報をデジタルで記録できます。
- 建設DXの一環として、政府主導で「工事写真3.0」が推進されており、データとしての活用が期待されています。
電子小黒板の導入により、工事写真の撮影や管理にかかる時間と手間を大幅に削減し、建設現場の生産性向上に貢献しています。
電子小黒板の具体的な使い方は?
1. 事前準備
- スマートフォンやタブレットに電子小黒板アプリをインストールします。
- 工事案件のデータを事前に作成し、保存しておきます。
2. 現場での撮影
- 現場で電子小黒板アプリを起動します。
- 該当する工事案件のデータを選択します。
- アプリ上で必要な情報(工事名、撮影日、工種、施工状況など)を入力または選択します。
- 写真を撮影します。撮影と同時に、選択した情報がデジタルの黒板として写真に挿入されます。
3. 写真の管理
- 撮影した写真は自動的にフォルダ分けされ、整理されます1。
- クラウドサービスと連携している場合は、写真がクラウドに保存され、簡単に管理できます。
4. レポート作成と提出
- 撮影した写真を使って、アプリ内で報告書やレポートを作成します。
- 電子納品支援ソフトと連携している場合は、撮影データを取り込んで成果品や台帳作成に活用できます。
電子小黒板を使用することで、従来の物理的な黒板を持ち運ぶ必要がなくなり、撮影ごとの書き換えも不要になります。これにより、一人で効率的に現場撮影を行うことができ、作業時間の短縮につながります。
電子小黒板のセキュリティは大丈夫?
電子小黒板のセキュリティは、主に以下の点で確保されています。
- J-COMSIA認定
電子小黒板を含む写真管理ソフトやアプリは、J-COMSIA(一般社団法人施工管理ソフトウェア産業協会)の認定を受けることが重要です。この認定は、信憑性確認機能(改ざん検知機能)が正しく実装されていることを示します。 - 改ざん検知機能
J-COMSIA認定を受けたソフトウェアは、写真の改ざんを検知する機能を備えています。これにより、工事写真の信頼性が確保されます。 - SVG形式の活用
一部のアプリでは、SVG形式のレイヤーデータとして現場写真、電子小黒板、図形などを分けて保存できます。これにより、写真自体の改ざんを防ぎつつ、必要な情報を追加できます。 - 暗号技術の利用
公共工事では、CRYPTREC暗号リストに記載されている技術を用いて、信憑性確認(改ざん検知機能)を有する製品を使用することが求められています。 - 2段階認証
一部のアプリでは、ID・パスワードに加えてメール承認などの2段階認証機能が搭載されており、不正アクセスのリスクを低減しています。
これらのセキュリティ機能により、電子小黒板を使用した工事写真の信頼性が確保され、改ざんのリスクが軽減されています。実際に自分が携わった現場でも使用していましたが問題が起きたということは聞いたことがありません。可能性は0ではありませんがリスクはかなり低いものと思われます。
建設業全体ではどれぐらい普及しているの?
- 公共工事を中心に普及
公共工事が多い「土木」「電気・設備」「管」工事では、特に積極的に導入されています。「電気・設備」が32.7%、「土木」が24.5%と高い導入率を示しています。 - 民間工事への拡大
国土交通省の使用許可から5年が経ち、電子小黒板の利用は民間工事にも広がっています。建築業で7%、管工事で4%の増加が見られました。 - 業種別の導入状況
電子小黒板は業種を問わず幅広く普及しています。特に配筋検査などのコンクリート工事では、写真枚数が多いため、電子小黒板による写真整理の自動化が注目されています。 - 導入の理由
電子小黒板は「荷物が減った」「黒板がキレイ」など、撮影シーンでの利便性が高く評価されています。また、作業効率の改善が認められ、公共工事での実績が民間工事にも波及しています。 - 課題
導入が進む一方で、半数のユーザーが台帳作成作業に関して従来のデジカメ使用時と変わらないと感じています。大量写真の仕分けや台帳への文字入力などが課題として残っています。
電子小黒板は、建設業界のDX(デジタルトランスフォーメーション)の一環として、多くの現場で採用が進んでいます。
おすすめアプリ
おすすめアプリはこれ一択です。前提条件としては自分は公共工事で一次下請けでの使用が多いです。元請さんはスーパーゼネコンさんや地場のゼネコンさんだったりと色々です。
ですが、自分が携わった現場では皆同じアプリでした。その名も「電子小黒板PhotoManager」。 実際に使ってみて良かったところと使い勝手が悪いところをそれぞれまとめてみました。
機能面
- 工事写真のレイヤ化に対応しており、SVG形式で撮影した工事写真に注釈を追加できます。
- クラウドサービスと連携し、撮影した写真を自動で整理・保存します。
- 予め用意されたレイアウトから撮影箇所に応じた小黒板を個別に作成できます。
- レイアウトの編集が可能で、自社オリジナルの黒板を作成できます。
使いやすさ
- iOSとAndroidの両方に対応しています。
- 電子小黒板のサイズや位置を自由に調整でき、小黒板の位置を気にせずに撮影できます。
- 小黒板をタップすることで、切り替えや入力内容の修正が可能です。
効率化
- 1回の撮影で作業状況などの写真撮影が完了します。
- 写真に付加された工事情報の確認や、写真の一括選択とクラウドへのアップロードが可能です。
- PCの「PhotoManager」と連携し、スマートフォンで撮影した写真をオンラインストレージを介して自動連動できます。
コスト
- 初期費用は0円で、11,800円で1ライセンスを買い切りで購入できます。
- 無料トライアル期間があります。
これらの特徴により、PhotoManagerは工事写真の管理と整理を効率化し、現場での作業時間を短縮することができます。
次に使い勝手が悪いと感じたところは、
- スマートフォンで使用する場合、画面が小さいため文字が見にくくなります。最低でも6インチ程度の画面サイズが必要で、9〜10インチのタブレット端末がより操作しやすいです。
- 現場での黒板作成が面倒になります。従来のチョークで書く方法と比べ、文字を入力する作業に変わるため、特に予期せぬ写真を撮る必要がある場合に時間がかかります。
- 慣れるまでに時間がかかります。初めて使用する際は操作に戸惑い、従来の方法よりも時間がかかる可能性があります。
- 日差しが強い場所では、タブレットの画面が反射して撮影しづらくなることがあります。この場合、角度を変えるなどの対策が必要です。
- アプリを使用できない特殊な現場環境(粉塵が多い、湿度が高いなど)では導入が難しく、従来の方法を併用する必要があります。
あえてデメリットを挙げるとするこんなところでしょうか。しかしこれらは知っていれば対処可能ですし、使いながら慣れていけば問題ありません。これらの点に注意しながら使用することで、PhotoManagerの利点を最大限に活かすことができます。
終わりに
あまりに便利すぎるのでいいところばかり挙げたくなるアプリですが、慣れるまではちょっと時間がかかります。さらに高齢の管理者の方には中々受け入れられないという現実もあります。
しかし、時代は変わってきています。これからは益々現場で使う頻度は増えていくと思われます。今のうちからガンガン使って慣れていくのがいいと思います。まさに「習うより慣れろ」ですね。
そして最後に言いたいのは現場で黒板を持ちながら山道や現場の道路を何キロも歩く事に比べればスマホやタブレットだけで写真管理できるのは本当に有難い事です。
便利なものはどんどん活用していきたいですね。
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